本の広場 - 「花の谷」のひとびと ・ 感想


「出来るだけ前向きに生きたいと考えている慢性病患者より」 51歳男性


『「花の谷」の人びと 海辺の町のホスピスのある診療所から』を読ませていただきました。感銘というには、とても穏やかな気持ちになる読後でした。読後の感想を知人へのメールに書いたのですが、それを感想に代えて送らせていただきます。

 副題のとおり「ホスピスのある診療所」のルポなのですが、診療所開設に至る経緯(開設者で院長である医師伊藤真美さんとさまざまなひととの出会いが診療所の物語の鍵になっています)、著者の土本さんがこの診療所で出会った患者さんや医師・看護師・職員さんが語る様々な物語が記されています。

 ホスピスケアですから、当然亡くなっていく人たちの物語も多いのですが、不思議と悲しさや寂しさだけでなく、さわやかさ、清らかさを感じさせてくれる物語でした。

 本の終わりのほうで、土本さんが伊藤医師に「人の死」について、「最期までを支えることの意味」について尋ねる一節があります。伊藤医師のお話を聞いて土本さんが到達したひとつの理解が次のように語られています。

 ・・・・・・院長(伊藤医師)にとって「自然」とは、「命」とも同義であるという。
「死」について訊ね、「命」という言葉にたどり着く。この連関の中に「花の谷」も確としてある、ということに違いない。いつか聞いて見たかった問い、すなわち「最期まで支えることの意味」は、「人間みんな、死んでいくのは大変だと思う」 この言葉の中にあった。いずれ死に逝く者の一人として、もしも、と自分の身に置き換えて考えて見ると、慰めも励ましも要らないが、死んでいくことの大変さへの共感こそほしいと思うからだ。 ・・・・・・

 また別の箇所に伊藤医師のつぎのような言葉が紹介されています。
 私たちがこの地球上で暮らしていくとはどういうことなのか。
 この世に生を得て、いずれ去っていくとはどういうことなのか。
 この「問い」は、僕にとっても深く同感できる「問い」です。

 存在の意味、「実存」に対するこの「問い」は、「自分」とは何なのかという問いでもあります。多分この問いに対する「答え」はないのだと思います。でも、存在の意味を問い続けることは、”意味”のあることなのだと思います。

 食べることをはじめ、生活の中のささやかな楽しみ、自分にとって大切だと感じるものを守ろうとする営み、そのような日常の積み重ねが、価値ある生につながっているようにも思います。

 オリンピック、高校野球などスポーツの話題が賑わいをかもす一方で、憲法九条の改変を迫るアメリカの高官のコメントが伝えられる。「護憲は時代遅れ」という感覚が広がっている?・・・万引きを理由に熱湯をかけられて母親に殺された中学生、無責任な検査体制のために4人が命を落とした原発事故・・・日本社会の景色がなんとも不気味に感じられるのは私一人ではないと思うのですが、「世論」が時代を動かす力になかなかならないもどかしさを感じます。

 ・・・・・・というような具合に、私の2004年の夏は過ぎつつあります。
大切なことにもっとエネルギーを投入して、力強く行動しなくてはとも思うのですが、歩みはたどたどしいものです。


グループホーム・ユニット長 46歳女性


『「花の谷」の人びと』、 読み終わりました。
幾人ものかたがたがなくなっていき、その一つ一つの死にひきつけられてしまいました。
人間は必ず死ぬのだけど、通常はそんなことを少しは考えても真剣には考えない。
死ぬことがいかに大変なことなのか、納得するということが、生き続けること、どれひとつとってもいかに大切なことなのか、一つ一つの話から伝わってきました。
本当に時間を掛け大切に仕事を重ねていったことが内容から、理解できます。
出される食事のこと、スタッフの働き方、花の谷の設え、いろいろなことが印象に残り、勉強をしようという気になりました。


ノンフィクション作家 安宅温(『住んでみた老人ホーム』『走れ介護タクシー』他)


 出だしから引き込まれましたが、「陶器のつぼの方が息をしているから花のためにいいのよ」という一言が、伊藤さんの切られて短い命をいとおしむ気持ち、土に帰る日も近い命短き花へ注ぐまなざしとして、花の谷を貫く心として、生きていましたね。
管理したり医療理念を言葉にするより、「切花を大切に思う心」が、伊藤さんがスタッフに伝えたいことなのですね。
「花の谷の人びと」を丁寧に追うことで、そして考古学をやりたくて医学部に入ったという、伊藤さんの向こう見ずというか、おっちょこちょいな性格が、人をひきつけ、自身の意図というより、触れ合った直感から人と人がつながって、それぞれ自身で模索しながら花の谷にかかわっていく姿。その人たちが有機的に重なり合って、「花の谷」が存在することがすごく理解できるように書けていますね。プロパガンダを言う人のことは書きやすいけど、それも言わず、無計画にさえ見える中で、もっとも大切なことだけは譲らない伊藤院長と「花の谷」が、ありありと目に浮かぶように書けていました。伊藤さんが言う「ホスピスは要らない」という言葉は、医療の理想の姿でしょう。


ケアマネジャー(東京) 38歳女性


 がん・ホスピス というくくりではなくどうやって最後を迎えるか どうやって送るかということ 誰にでもおこる人生の出来事について改めて考えました。
父は、あまりにも唐突にいなくなってしまったので、今でも自分の中できちんと整理しきれていません。悔いがあるといえばあるし、それは最後のときのことだけではなく、彼と過ごした年月のあちこちにもっとこうしておけばよかったという思いがあるし、でもきっとそれは親しい人を亡くしたら必ず残る思いなのだろうな、と考えてみたり、ただ、やっぱり「時間が薬になる」んですよね。

 「親は亡くなった後でさえ子供に何か残す」というような一節がとても心に沁みました。


松戸有希子 35歳 主婦


 『「花の谷」の人々』は、読後ものすごく気持ちよかったです。
土本さんの文章がとても読みやすかったというのもありますし、何より「花の谷」院長先生をはじめとしたスタッフの熱意や「花の谷」のあり方に感銘を覚えたからです。


終末期における患者さんが、人間として最後にどうありたいか。
それを医療者としてどうサポートするか。決しておごることなく、しかし専門家としてきっちりと受け入れる素晴らしい病院であり、できる事なら同じような病院がこれからも出て来て欲しいと痛切に感じました。


また、私自身栄養学を学んで来たという事もあり、特に食事(栄養)に関する部分ははっとする点も多かったです。
多くの病院あるいは高齢者施設の栄養士は患者あるいは入所者と直接会う事やその健康状態を見て判断する機会は少ないと思います。そのためその人をどう判断するか、というと供出した食事の残菜量でしかありません。
しかし、「花の谷」では食事はその人だけが食べるためでは無く、「食べる喜び」のために出していること。これは驚きでもあり、「食餌」では無く「食事」本来の目的であり、そこに喜びが内在している。当たり前の事でありながら、多くの場合見過ごされている事実を改めて認識しました。
今でこそ栄養士も臨床の場へと言われていますが、実は栄養士はカルテを読む事が出来ない(読んでも理解出来ないという事も含め)、食事箋を元にこれまで食事計画をし、食事を供出してきました。
ここ数年「臨床栄養士」という新たな分野が確立されようとしてきていますが、まだまだですし、それにより、今度は患者さんの人間性と乖離するのでは?という懸念も抱いております。
これらについては、栄養士の職務あるいは立場という問題だけではなく「患者さん」本位で考えていって欲しいと思います。
多くの施設で「花の谷」のようであって欲しいと心から願っております。


知的障害者更生施設「れんげの里」施設長 柳誠四郎


 『「花の谷」の人びと』、今朝、読み終えました。
読みながら「子宮内で胎児が聴いた母親の鼓動に似た音が人に安らぎを与える」といういつか読んだ文章を思い出しました。
「『花の谷』の人びと」の文章のリズムは私にはとても心地よかったです。
<内容について>
 院長のいうギアチェンジのはなし、ホスピスが増えると医療が貧困になるという話、共感し勇気づけられとても嬉く思いました。元氣を頂きました。特にギアチェンジの話は、私がぶつかっている、訓練なのか生活支援(ありのままを受けとめる)かという課題のヒントになりました。歳のせいか、所々に見られる温かい食事の話や霊前のひまわりの話等に幾度か目頭が熱くなりました。


群馬県医師会沢渡温泉病院・医師 荒木稔(僕も身体障害者です)


 まず装丁がいいです。カバーに花の形の窓があって本体の表紙のコスモスの写真が見えて素敵です。
それから患者(脳出血後遺症)として入院された緩和ケア医師の的場和子さんのお話。
最初に入院した病院では、グレープフルーツを四分の一に切ったものがお皿にポンと出てきて、さあどうぞ、と。これはいじわるだと思いましたね。これをどうやって食えっていうの? こりゃ、しごきかい? そう思ってしまいましたよね。
お?よくぞ語ってくださいました。「食え」っていうのがリアルでいいですね。私もそう感じたことがありました。


ピースハウスホスピス教育研究所 松島たつ子


 感想を簡単に書かせていただきます。
1.まず、とても丁寧に取材され、客観性も持った作品という印象があり、価値観を押し付けられるということがなく、気持ちよく読ませていただきました。
2.伊藤先生を初め、登場する先生方を存じ上げていましたので先生方がどんなお気持ち、考え方で取り組んでおられるのか、活動内容などもよくわり、同じ分野にいるものとしてとても興味深かったです。また、ホスピス緩和ケアに対する考え方でも共感する点が多く、自分の考えを再確認することもできました。
3.構成が「花の谷クリニック」の紹介とそこに関わる方々の物語との組み合わせになっているので、単調にならず、深まりを感じました。
4.スタッフに関するところもケア提供者というより、一人の人間と しての悩みや苦しみ、喜びが紹介されており、患者・医療者と いうのではなく、人間の物語として心に伝わってきました。
5.医療や福祉の現状にも考えさせられる点が多々ありました。さまざまな課題、難題の山々を、伊藤先生を中心に皆様が、とても爽やかに力強く切り開いていく様子に勇気づけられました。今後は、こうした一人ひとりの試みが、そこだけの素敵な物語りに留まらず、大小のいろいろな形の医療福祉サービスが繋がって互いの特性を活かしながら、地域社会の中で機能していくようにと願っています。私も自分のいる場所で何ができるのか考えていきたいとあらためて思いました。
 「本を読んでいるのですが、映像を通してたんたんと紹介されているようで、その映像をみながら、読み手である私がいろいろなことを考えている」、そんな思いを持ちながら読ませていただきました。


館山市 庄司博子


 新緑の美しい季節になりました。忙しい日々をお過ごしのことと思います。
『「花の谷」の人びと』を送っていただきありがとうございました。
父(手作りのふんどしのAです)の死がなかなか受け入れられず、悶々とした日々を過ごしていた時、送られてきたこの本で、心が少しずつ元に戻るように感じています。
皆が同じ気持ちで家族の死を見つめているのだと・・・・・・。
“皆同じ”ということがとても救いになるんですね。
とても・・・・・・、不思議です。貴重な一冊です。
益々のご活躍、お祈りいたします。




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