スープのよろずや「花」

【学】ウカマウ映画&太田昌国さん講演会

太田昌国さんの数々のご著書は、ちょうど私が社会人として働きはじめ、今日まで続く時代に重なって出版されている。私が医師として過ごしたこれまでの35年間の時代は、2003年を境に大きく変わった。政治はうさんくさいものであり、私が政治のことに関わろうが関わらなかろうが、世界一安全で平和な日本社会は変わることがないので、医師としての仕事に没頭していればよしだと思っていた意識に、2003年の自衛隊のイラク派兵は大きな衝撃をもたらした。まさか私が生きている間に、日本が戦争加担国になるなどということは思いもよらない事であった。その戦争という現実が身近なものとして迫ってきて、もはやこの数年は、戦前どころか戦時であると私は感じている。命に関わることが仕事の医師として、安全で平和な社会を取り戻すために、戦前戦時に社会に向き合う事をせずしての医療などありえない。太田さんの本を読み、ウカマウ映画に触れて、植民地主義の時代はとうに終わりをつげ、今はグローバル社会で世界はつながっているのだという底の浅い思い込みは、大きな間違いであることに気づかされた。これまでみえていた社会や世界の成り立ちの認識が、私の中で大きくがらがらと変わっていく。

私が医師という仕事を通して問い続けたいと思ってきた「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」という問いに向き合うために、太田さんの言論は、私にとって核となる道しるべである。太田さんをお招きし、皆さまとともに考え学ぶ時間としたい、そんな思いで、この連続企画を組ませていただいた。  スープのよろずや「花」代表伊藤真美

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