No.7 第8回 日本緩和医療学会に参加して

日時:2003年6月27日、28日
会場:千葉県 幕張メッセ

 緩和医療に関係する現場から6年間離れ、花の谷クリニックに勤務することになって再び緩和医療に携わる事になりました。
就職する前に『緩和ケア』の1日研修を受け、復習も兼ねながら最新情報を聴取し勉強してきたつもりでした。しかし6年前の記憶は、“覚えているつもり”でいてもいざ働いてみると勘の鈍りを実感させられます。体験的に覚えたことであれば、スッと次の判断が出来るはずですが、「ん?これでよかった?」という、ちょっとした戸惑いがやはり出てくるのです。今一つ、自分が緩和医療の流れに乗れていない気がしてなりませんでした。また6年間の緩和医療界の変化にも、自分は追いつけていないように感じていました。そこで、今回の緩和医療学会が6月27、28日と千葉の幕張で行われるということから、緩和医療に対する考え方の再認識を主な目的に学会参加をしてみたので、学会の様子と内容・私の得られたものについて少し記してみたいと思います。

 はじめに、日本緩和医療学会というものがどのような学会なのか簡単にご紹介しておきます。
 今から7年前の1996年(平成8年)に発足した学会で、癌と診断された段階から終末期に至るまでの間、生活の質(QOL)を重視した医学、医療を行うための研究とその実践、その教育を行うための場である・・・とされています。もう少し解りやすく言うと、いまだ癌は死亡率の高い病気で「癌は治せる」と言っても癌で亡くなっていく方が多いのも現状です。
そのような癌で亡くなっていく方が残された時間を充実して過ごしていただけるよう、医療者が研究し、その成果をお互いに共有し研鑽する場が緩和医療学会です。
 この学会の特徴は、「医者だけが集まって行う学会」「看護師だけが集まって行う学会」という他の学会と違って、医師、看護師、薬剤師、技師、臨床心理士、ソーシャルワーカーなどの医療従事者、呼吸や疼痛、薬理などに関する研究者、ボランテイアなど、多様な職種の人々が集まっていることです。色々な職種の人々が一同に集まって同じ目的について意見交換できる学会というのは珍しく、「医者の立場ではこう考えますが、看護師の立場ではどうですか? 薬剤師としてはいかがですか?」など立場の異なる職種で、全国の緩和ケアに携わる病院、緩和ケア病棟やホスピス、医療研究施設から集まった方々の意見がその場でかわされます。その様子を聞けただけでも今回の学会に参加した意味があったように思います。

 学会の発表内容からは、癌による痛みを緩和するための鎮痛剤の使用方法について再確認してきました。
 最近は、貼り薬での麻薬鎮痛剤がよく使用されていますが、飲み薬や坐薬、注射と違って長い時間をかけてゆっくりと血中濃度が上がる事と、他の麻薬をどれくらい使った時に切り替えたらよいかに随分と幅があるので、様々な施設によって使用方法の事例や、検討が報告されていました。6年前には発売されていなかったシール型(貼り薬)鎮痛剤で、まだ発売されて1年程しかたっていない新しい使い方の薬であることから、用法や製品自体に今後検討の余地があるようにも感じました。また使用する医療者がその製品の特性をよく熟知して、痛みを抱えている患者様に適切に使用出来るようにしておく必要があることも感じることができました。
 2003年7月には、また新たな麻薬鎮痛剤が発売され、世の中に出回り始めます。癌の痛みにはモルヒネが主体だった時代から、様々な鎮痛剤の中から、痛みの性質を考慮しながら状態に合ったものを選択する幅が拡がり、患者さんにとっては快適な生活が送れる可能性が広がるはずです。医療者は、新薬使用に関する知識の修得と、麻薬系鎮痛剤の特徴、副作用等考慮しながらよりよい鎮痛剤の作用をひきだすために薬剤の変更を試みる、いわゆるオピオイドローテーションをとりいれる努力を怠らないようにしていきたいと考えています。
 疼痛緩和のほかにも、ターミナル期の適切な輸液のあり方、サイコオンコロジー(精神腫瘍学)分野での精神症状対策、緩和医療スタッフの教育システムについてなどのパネルディスカッションがありました。
 ポスター発表では、癌に併発する高カルシウム血症対策、予後予測研究、代替・補完療法の現状、不眠改善や精神安定の為のアロマテラピーなど、各施設での様々な取り組みが紹介されました。まだまだ未開拓の領域も多いですが、当院でも患者さんのニーズに応えるかたちで、できることからの取組んでいければと思いを新たにしました。

看護師:久保晃子

コメントは受け付けていません。