2019.9.9 台風15号災害の経験

9.8(日)午後
昼過ぎより、大型の台風15号が今夜近づくとのことで、クリニックのウッドデッキにあって飛ばされそうな椅子や机などを中にいれ、夕方に病室の雨戸をしめる。2階に自室に行き横になるが、0時前後より強風のため2階が揺れ眠れず、又ベッドの上の煤煙窓の隙間から霧雨のようなものが降ってきて顔にかかり、まもなく停電。病棟に向かう。

9.8夜〜9.9早朝
台風15号が、三浦半島と千葉県房総半島のあいだを通過しているらしく、深夜より、5、6回の停電があるがいずれも数分以内に復旧。看護師はその度に訪室して患者さんの状態を確認。在宅酸素の機械を酸素ボンベに切り替える。頻回の吸引の患者さんはおらず、充電式吸引器が1台あるので、発電機は出動させず、様子をみることにする。
2時過ぎ、風もさらに強くなってきたが、1階の診察室のベッドで仮眠。3時から4時、風がピークとなり、東側の角部屋の窓ガラスと病棟ホールの大きな窓ガラスがガタガタ揺れて、いつ割れるかと、夜勤スタッフは角の病室の窓ガラスの前に机や椅子をおいて見守る。4時過ぎに停電した後は復旧せず。5時過ぎ、明るくなってから発電機を回す。毎月9日は発電機を回す日と決めて点検していたので、発電機はスムースに稼働する。ガソリンの携帯缶に10ℓは入っている。厨房スタッフが来るのを待つ。倒木のため、鴨川からのスタッフは、時間に到着できず、au同志でつながった千倉のスタッフが代わりに到着。発電機を回しながら、朝食の支度。

9.9(月)朝
スープのよろずや「花」の前のラグナリアの枝が折れて、半分なくなっている。中庭のザクロ、月桂樹、庄左エ門側の槙の木が、根こそぎ倒れている。太陽熱パネルが剥がれてガラスが飛び散っている。が、室内は病棟と外来も無事で良かった。

01
スープのよろずや「花」の前の枝が折れたラグナリアの木
02

2019台風15号-2

中庭

スライド04

9.9(月)昼間
本日勤務のスタッフ2名は、飛んできた瓦などで車のガラスが割れたそう。ブルーシートで窓をふさいだ車でスタッフ到着。
館山、南房総、鴨川市とまだ広範囲に停電の様子。車で携帯を充電しながら、車のテレビをつけるが、ニュースは流れず。どうなっているのか全貌解らず。発電機のガソリンが残り少なくなってきたが、ガソリンスタンドが空いていない。電子カルテが見れない。
こんな中でも、シルバーカーを押して数名ご近所の患者さんがやってくる。薬があるなら、今日はカルテが見られないからまたあとで来てねと話し帰っていただく。本日のデイはどうしますかとリハビリチームに聞かれ、こんな時だからこそ、迎えに行って安否確認し、希望者は連れてきてと話すと、いつものように、ほぼ全員デイケアにやってくる。午後から、予定どおり訪問診療にも行くことにする。県道沿いの当院の看板が倒れている。訪問先の患者さんは、風がすごかったねというものの、皆以外に平常だ。

9.9夜〜9.10朝
4950
夜2時すぎ、藤沢キャンナスからガソリン30リットルが届く。そして昨日より、クリニックの見学にいらして足止めされていた佐賀からと長野からの医師お二人を、東京駅まで送っていただくことができた。

9.10(火)
停電2日目、エアコンなしで、日中の気温が35°になった。当院スタッフが熱中症になりダウンするも、補液施行して回復。病室の患者さんも、ぐったりして、いつもより体温が高めの人が多い。エアーマットレスが凹んできている。発電機も当院にあった1台の他、なんとか2台調達でき、1台は厨房用。2台めは、薬を保管している冷蔵庫1台をつなぎ、充電式吸引器の充電を行う。リハチームが、発電機の近くにエアマットを運んできて、次々エアーを入れて患者さんのベッドにもどしていく。3台目の発電機は、扇風機10台をつなぎ各病室に配置できた。これで、何とか乗り切れるかとちょっとほっとした。

9.10夕方、電気が復旧しました!

auとソフトバンクの携帯も復活。多くの皆様から連絡をいただいていたが、メールやメッセージをやっとみることができた。しかし、まだドコモとNTT光回線がだめで、当院の固定電話とwifiがつながらない。しかし、なんと光回線でない黒電話はつながっている。

9.11(水)
エアコンと携帯電話が繋がるようになって、今日は電子カルテで外来を始めることができたが、光回線でつなぐwifiが機能しないため、まだネットとFAXはつながらず、レセプトコンピューターと電子カルテがリンクせず、事務は2重の入力をしている。電話が繋がらないところが多いので訪問するしかわからず、今日できるだけ、在宅やデイの患者さんたちをスタッフが訪問したが、今のところ、皆さんなんとか大丈夫。

さて、エアコンのなか、携帯もつながり、ほっと一息つくことができたが、停電が長くなると水道が止まるのだそう。昨日あたりからスタッフの家もあちこちで断水になっている。千倉もこれから断水かもとの情報があり、すべての浴槽に水やお湯をためる。
ガソリンの携帯缶、ペットボトルの水、雨漏り対策のブルーシートなどが、品切れに近くなっているが、今のところ当院で必要分は入手できた。

本日千葉県南部の電力域復旧が9.13以降との東電の発表があったそう。今現在まだスタッフ十数人の自宅が停電、断水のところが数件あり。また、電話がつながらないところが多い。市原市、千葉市内など県北の方も停電しているところがまだあると聞く。

往診しながら、車のテレビを付けてみるが、どのチャンネルを回しても台風被害のニュースなし。看護師と、どうなっちゃってるんでしょうねえ、都心の被害が少なかったからでしょうかねえ、と。SNSに流れてきた「こんな時に内閣改造、千葉は棄民された」とのタイトルに、本当にそうなのかもと思い始める。

9.12(木
クリニックのNTT光回線が繋がったようで、固定電話とwifiが復活、ネット環境がほぼ回復。docomoの携帯もつながった。

固定電話がつながったと同時に、あちこちから電話のラッシュ。ますは県庁からと厚労省から。どちらも2つの部署からで、重複した確認。最初は丁寧に答えていたが、同じ内容なので、「さっき答えましたよ。」段々口調が強くならざるを得ない。

今日時点で、当院数名のスタッフ宅がまだ停電中。断水のところもあり。海岸沿いの館山市や南房総市白浜町、それに山側の旧丸山や旧三芳村が倒木が多くいけないようだ。

君津から鴨川のJR内房線は終日まだ運休。アクアライン高速バスは全線復旧しています。(ただし道の駅富楽里は閉鎖されているので止まらず。)

9.13(金)
非常勤の本田医師が来てくれ、外来をお願いし、訪問診療をしながら、関連の施設を回る。今日で停電5日目の施設は、かなり疲弊している。
3.11の時、いっしょに石巻や女川をまわり、炊き出しをしてくれた東京にある介護ショップ「パナソニックエイジフリーショップ」の店長に思いたって電話。9.13の夜、ビーフシチューの炊き出し100人分、それに発電機、ガソリン100ℓを持って来てくれる。

神奈川県の藤沢本町ファミリークリニックの院長から発電機とガソリンの準備があるとのメッセージを9.10にいただいていたのを読み、近隣の施設がまだ停電中で復旧に時間がかかりそうな状況。やはりお借りしょうと思い電話する。9.14 発電機2台とガソリンの携帯缶2つ届けてくださるとのこと。

千葉県選挙区からの参議院の小西さんから連絡あり、いまだ停電が続いている南房総の施設の数箇所に電源車の配備をお願いする。

9.14(土)
非常勤の荻野医師と本田医師に外来と病棟をお願いし、昼前山梨から到着した古屋医師率いる「ふるふる南房総 2019」の口腔ケアチームに、近隣の施設をみていただく。
2019台風15号-5

藤沢本町ファミリークリニックから、発電機2台とガソリンの携帯缶2つが届き、早速当院が定期的に往診している、白浜町のグループホームと小規模多機能事業所に届けることができた。

キャンナス代表菅原夫妻が、館山や千倉の医療施設や介護施設を周り、夕方当院に発電機2つとガソリンを持ってきてくれる。いまだ停電中の患者さん宅に届けることができた。

「パナソニックエイジフリーショップ」 のスタッフ3名がきてくれ、当院スタッフも手伝い、かにた婦人の村にお昼80人分を届けることができた。

9.15(日)
2019.9.15音楽会
ちいさい秋の音楽会、台風被害の大変な折ですが、予定通り、まだ停電中の近隣施設へのチャリティーコンサートとして開催しました。

おかげさまで36,000円のカンパをいただきました。ありがとうございました!

以下は、第1部の様子です。

2019.9.15音楽会(房日)
2019.9.25コンサート(房日)

2019台風15号-6

9.15(日)夜
かにた婦人の村に、昨日に引き続きスタッフがお昼を届けたところ、まだ、壊れた屋根にブルーシートをかけられないでいるとの情報。明日は早朝から強い風と雨予報。事態を確認しに行く。

とても素人では手に追えない状況とわかる。当院の建築にずっとかかわってくれた大工さんにお願いして、明日朝からきてもらえることになる。

9.16(月)
朝から土砂降りのなか、当院スタッフが数名と、他県からのボランティアの方々が何名も集まってくれ、大雨の中、屋根の修理と雨漏りの手当に皆で奔走。

2829

飛んだ屋根を塞ぎ、雨はやんだけれど、なぜか雨漏りが続いた。天井板に穴を開けて、溜まっている水を流し切ったら、雨漏りは止まった。

9.16(月)夜

3031
停電7日目にして昨日やっと電源車がきた丸山町のリブテラス丸山。電源車ってどんなものか知らないので、行ってみてきた。今晩この車を管理している親切そうなおじさんに話を聞く。おじさんは静岡からきていて、いつ交代要員が来るのか分からないそう。お疲れ様です。

でも100V用の電源車で、200Vの業務用エアコンも冷蔵庫も使えない。エアコンと冷蔵庫を使いたいのでという要請があったので、明日200V用の電源車が到着するそう。何ではじめから200V車を配置してくれないのだろう!?おじさんに文句言っても仕方がないね。

9.17(火)
厚労省から電話があった。
担当官「 9.19午前にですが、厚労大臣が被災している訪問診療の患者さんのところに視察に入りたいが、可能でしょうか? 」
私「 9.19午前なら外来がないので可能ですが、ところで厚労大臣誰ですか?」
担当官「加藤○○大臣です。」
私「ああ、加藤さん。加藤さんに文句いっぱいあるので、文句言われても構わないならいらしてくださいとお伝えください。」
担当官「そうした現場の声をきくのが役目ですから。また決まりましたら、ご連絡します。」
失敗した。どうぞどうぞいらしてくださいと伝え、来て頂いてから文句いっぱい言えばよかった。案の定翌朝、担当官から電話があった。担当官「経路の関係で、今回はそちらにはいけないことになりました。」 ああやっぱりね。

9.18(水)
いまだ電気が復旧せず10日目を迎えた南房総市の山名地区、電話も通じにくい知人を訪ねました。この地域の60軒ほどがまだ停電だそうです。地区の中心にある八雲神社がそっくりなくなっていました。
スライド13
スライド14

9.19(木)
停電11日目、丸山町大井地区の停電と断水が解除され、スタッフ宅も一軒復旧。あと一軒!

9.20(金)
停電12日目、丸山町宮下地区の停電が解除され、これでスタッフ全員の自宅の電気が復旧!

9.26(木)
停電はおおむね復旧したけれど・・・・。

台風後これまでクリニックの敷地内で、スタッフの車3台がパンクしている。屋根のOMソーラーパネルが割れてガラスが飛び散っているせいかなあ・・・。私の車もパンクして、いつもお世話になっている近くの自動車屋さんに電話したら、通じない。たずねてみると今日まだ、NTT光回線がつながっていないそう。
38

9.26(木)

南房総市役所に、2トントラックを借り、当院の軽トラックとで3往復して、主にクリニックの倒木の被災ゴミを搬入しました。
写真は、市役所本庁東側駐車場の様子です。南房総市の被災ゴミ仮設置き場所は、以下の3か所。
    富浦地区:市役所本庁東側駐車場 
    富山地区:旧平群小学校グラウンド(校庭))
    外房地区:旧南三原小学校グラウンド(校庭)
スライド17

9.28(土)
48
まだ運びきれなかった倒木が半分ぐらい残っていて、今日も軽トラ出動。被災ゴミの持ち込みは、10月10日まで受け付けるそうなので、ぼちぼちやってます。

思ったことまとめ

多くの皆様方から、心配りのあるお見舞いのメッセージをいただきました。ありがとうございました。

フットワーク軽く、急な依頼に応えてくださった皆様に、本当に感謝申し上げます。

なぜか、なかなか報道されなかった今回の台風15号災害ですが、被害が大きかったと言われる南房総の千倉町にある有床診療所で経験したことの一端を、急いで忘れないよう書き残しました。何かの参考にしていただければ幸いです。

このたびの台風被害で、かつて農業と漁業が栄え、今高齢化率40%以上となった南房総では、自宅はなんとか修復できたものの、作業場や物置き、そしてハウスが壊れ、これを機に廃業を決意したと言う方々の声を聞きます。寂しくなります。

医療機関や介護施設では、停電はいのちに関わる重大事でしたが、もともとエアコンはつけないし、早寝早起きの元気な方々は、停電などそれほど大きな問題でないよと、これまでどおりシルバ−カーを押してクリニックに来てくれました。電気に頼り過ぎない生活を学ばなければと思います。

この町が、これからどのように変わっていくのでしょうか。より住みやすい町になってほしいと願いながら、これからも、今のホントにおかしな政治に対し、新自由主義経済で拡がり続ける格差社会の理不尽さに対し、辛口の発言を続けていきたいと思っています。

      2019.9.30 花の谷クリニック 伊藤真美

コメントは受け付けていません。