第32回「園芸を取り入れたリハビリテーション」

講師: 前根治子さん

 日本に園芸療法が紹介されて以来、10年以上になります。園芸療法の効用が広まるにつれ、リハビリやレジャー活動の一環としてとり入れる施設や病院も100箇所以上となり、今後、ますます増えていくものと期待されています。
 いろいろな療法の中でも、身近な生きた植物を扱う活動は、五感を刺激する、心身の 機能が高まる、命の尊さを学ぶなど、多くの効果が知られています。植物は、人の心を癒し活力を与えてくれ、集中力を高め仕事の効率をあげ、命の大切さを教え、美しさと収穫の喜びをもたらします。また、植物を育てることにより、通常はお世話してもらう側から(植物を)お世話する側にたてる、それによって自信を取り戻すことができます。植物を慈しみ育てる活動は、障害のあるなしにかかわらず、私達の日常生活のすばらしい潤いをもたらします。

 さまざまな理由から、施設や病院・ホスピスなどで療養・生活を余儀なくされている方々、特に高齢者の方々にとっては、季節感を味わうことのできる身近な植物に触れることは、大きななぐさめ、喜びともなります。また、園芸活動は、種まき・さし芽などの軽い作業から、土をふるう・耕すといった身体全体を使う運動まで幅が広く、したがって、さまざまな症状や目標に合わせたプログラム作りが可能です。このように、一人一人それぞれ異なる課題を抱えた方たち、特に高齢者の方々に、大きな効果が期待できる園芸療法をご紹介させていただきたく、御案内申し上げます。

☆☆☆ 講師: 前根治子さんの紹介 ☆☆☆

イギリスのコンベトリー大学で園芸療法を2年間学ぶ。
イギリス在学中は、大学の授業と平行して、リハビリ専門病院とホスピスで、研修生として園芸療法の技術を学び、学習障害・知的障害を持った方たちの療法用ガーデンでボランティア活動を続ける。
コンベトリー大学より園芸療法士としてディプロマを取得し2000年1月に帰国後、園芸療法アドバイザーとして、園芸療法の講座やセミナーを(NHK学園、読売文化センター、その他)、また東京都立保健科学大学の非常勤講師として、学会での研究発表やオープンカレッジでの講座を担当、君津市の千葉医療福祉専門学校でも、作業療法学科で園芸療法の講座を担当。

日時 : 2003年10月7日(火) 午後7時より9時まで
場所 : 花の谷クリニック 外来ホール
千葉県南房総市千倉町白子2446
参加費 : 500円
問い合わせ先 : 0470-44-5303


~勉強会のご報告~
  今回、園芸療法ということで、多くの、いろいろな職種の方が、参加してくださいました。
看護師、介護職、医療福祉関係者が約半分、園芸づくりや農業の方が1/4近くいらっしゃり、その他、主婦、一般の方がいらっしゃいました。
医療関係者だけでなく、とても関心の高い勉強会となりました。

 園芸療法について、講師の前根さんはいろいろお話してくださいましたが、実際に関わった患者さんや現場の様子を写真に撮っていたものをたくさん見せてくださり、大変印象に残りました。
写真で見るだけでなく、実際にも見てみたいと思うほどでした。

園芸療法とは?

 アメリカでの定義は、医療や福祉の現場で、専門的に行われるプログラムの中で、治療やリハビリテーションを目的に、植物および園芸活動を媒体として応用することを言います。
 イギリスや日本の定義としては、はっきりした枠組みはなく、精神科の患者の農作業が原型となっています。 そして、園芸療法は今、精神科領域のみだけでなく、高齢者介護や緩和医療にも使われるようになっています。 

園芸療法をするメリット

1) 植物は身近である。
2) 植物は人を怖がらせない。
3) 植物は誰に対しても平等。
4) 枯れる、命の大切さ、ライフサイクルを学ぶ。
5) 軽い作業から、体を使う作業まで。
6) 季節感がある。
7) 五感すべてに、働きかける、脳への刺激。

 当然何にでも、メリットはあると思いますが、特に 4) の「ライフサイクルを学ぶ」というところに、私は関心を持ちました。命の大切さを学ぶ意味でも、園芸療法は大切なことなのだと前根さんのお話を聞いて改めて思いました。

 園芸をすることにより、私にも何かできることがあると思い、穏やかになれることがあるようです。自分で作ることにより、うれしくなり、自慢したくなることが多いのです。
植物を生き物として扱うことは、命を大切に扱うことであり、人の命と同じであるとも話していらっしゃいました。当然植物は生き物であると思っていたものの、人の命と同じようにとは考えていませんでしたが、話を聞いていてその通りだと思いました。

 障害があっても、花壇や、庭造りに参加できるように、その高さや形を工夫することが当然のようになされているイギリスの園芸療法がとりいれられた庭の写真を多く見せていただきました。 園芸がきっかけで、今まで車椅子で作業をしていた人が、立って作業をするようになった方もいるとのことでした。よく、意欲に働きかけると日常生活動作が拡大されると聞いていましたが、実際に話を聞き、写真を拝見させていただくと、改めてすごいのだなと思いました。
 園芸療法は、その人のニードに合わせて、その人の疾患やリハビリ等に合わせてアプローチを変えることができます。何でもそうなのだと思いますが、その人のニードに合わせることはとても大切だと思います。 症状に合わせ、興味のあるものを把握し、能力を引き出す。残っている能力を最大限引き出せるように、ときには競争することで、やる気を起こさせたりするようなプログラムを組むことも大切だそうです。

 園芸は、ガーデニングが好きではなくても、はまることが多いそうです。 私も、正直なところ癒しに植物と思っていましたが、育てていませんでした。でも、お話を聞いていて引き込まれてしまい、そして育ててみようと思っている自分に気づきました。2時間があっという間に過ぎていきました。終わったあとも、質問されている方もいらっしゃいました。

 私は、今回初めて勉強会に参加させていただきました。 参加者の多さにまず驚きました。園芸療法の関心の高さにも驚きましたが、勉強熱心な方が多いのだなと思いました。機会があったら、もう少し具体的に、実際に園芸療法の現場、庭など見てみたいと考えています。

看護師:下村恭子

コメントは受け付けていません。