スープのよろずや「花」

Vol.25 9条守る 第一歩ノーベル平和賞候補

 市民たちの地道な署名活動で、戦争放棄を定めた憲法九条がノーベル平和賞の候補になった。発案者の鷹巣(たかす)直美さん(37)は「日本の市民一人一人の小さな声が集まって、正式受理につながったのだと思う」と喜んだ。鷹巣さんは二〇一二年の欧州連合(EU)の平和賞受賞で「戦後七十年近くも国家に戦争をさせなかった九条にも資格がある」とひらめいた。二人の幼い子を育てながらネット上で呼びかけを開始。一人でノーベル賞委員会に問い合わせている時は何の反応もなかったが、多くの署名を送り続けると、事務局からメールで返信が来た。署名活動への反響は大きかった。「戦争はもうごめんだ」という高齢世代や、「アイデアが面白い」という若者の声などが寄せられた。鷹巣さんは「日本国憲法には、これほど大勢の人に守りたいという気持ちを持たせる、世界で唯一無二の価値がある」と語る。

 「『憲法九条にノーベル平和賞を』実行委員会」の共同代表、石垣義昭さん(72)=相模原市南区=は昨年夏から、鷹巣さんらと署名活動に奔走。第一関門を突破したことで、「大きくほっとした」と話した。石垣さんは、東京都内の私立中学・高校の教諭を退職後に地元の「九条の会」の活動に参加。在職中から平和教育を大切にしていたが近年の平和運動は年配の人が中心になりがち。鷹巣さんと出会って勇気づけられた。署名の中には、メッセージを寄せてくれた人もいる。「活動を知って救われた」といった応援の言葉に、草の根の広がりを感じた。「改憲への動きが進む中、歯止めになるような、市民が憲法への意識を高めるきっかけになれば」と石垣さん。

 これからが本当の審査になるが、受賞に向けて後押しするために、さらに署名集めをしていくという。会のもう一人の共同代表、星野恒雄さん(80)=相模原市南区=も「九条が守られることを世界中の人が望んでいる。候補になり、第一歩を踏み出せた」と受け止めた。会の賛同者たちも、九条の価値が認められたことを喜んだ。神奈川県座間市の「麦っ子畑保育園」園長大島貴美子さん(67)は「大変うれしい。戦争に向かう靴音が大きくなっている実感があり、候補になったことが、改憲の歯止めになってほしい」と希望を抱く。七歳で終戦を迎えた東京都中野区の榎本博さん(76)は「九条の尊さに支持が得られ、元気が出た。改憲への動きは腹立たしい。今後も仲間を増やし、戦争放棄の大切さを分かち合いたい」と話した。

印刷用Vol.25

コメントは受け付けていません。