2023年2月11日〜2月17日 今回のテーマは「国家と戦争犯罪と死刑」です。
「国家と戦争犯罪と死刑」開催に当たって、太田昌国さんが書かれたものから以下抜粋です。
昨年の第 11 回死刑映画週間は、2 月 12 日から 18 日の日程で行なった。上映した 7 作品の中に、直 接的に「戦争」をテーマとしたものはなかった。だが、映画が語る物語の背景に「戦争」が垣間見える、 あるいはしっかりと根を下ろしているものがあった。例えば、韓国のキム・ミレ監督の『狼をさがして』 は、日本の戦争責任の問題に真っ向から向き合うことを怠ってきた戦後日本社会の在り方を批判して行動 した、1970 年代の若者たちを描く作品だった。熊井啓監督の『帝銀事件』は、この事件の真犯人が実は、 戦時中、傀儡国家「満洲国」ハルビンに本拠をもって、生物兵器の開発・細菌戦の実践・人体実験などに 従事していた旧日本帝国陸軍 731 部隊メンバーのような専門知識を持つ者以外には考えられないとする警 察の捜査方針が、GHQ(連合国総司令部)の指令によって捻じ曲げられたという、知るひとぞ知る挿話 が埋め込まれていた。GHQ の中軸をなした米国が、731 部隊が行なっていた研究と実践を「貴重なもの」 と捉え、それが遺した研究材料を我がものとし、メンバーらを戦犯訴追の対象から免じて自らの懐に匿っ たことも、周知の事実である。 「国家」「死刑」「戦争」の間にある、分かち難い結びつきを改めて痛感することとなった昨年の死刑映画 週間が終わって一週間後に、ロシア軍がウクライナに軍事侵攻した。
中略
ウクライナ戦争を鏡にして、そんな自国の過去を振り返り得る数作品を、今年の上映作品リストに加え た。「国家」「戦争犯罪」「死刑」が連なって見えてくるはずだ。