患者さんの今まであった生活を支える緩和ケアにとって、病棟での入院療養だけでは不十分だと感じ始め、「デイセンター」の役割について折々考えてきました。緩和ケアを必要とする人が集う「デイホスピス」という言葉があります。
日本ではまだなじみがない言葉ですが、イギリスでは、ホスピスというとホスピス病棟ではなく、「デイホスピス」を指すぐらいになっています。日帰りで、緩和ケアを必要とする人たちが来て日中を過ごして帰っていくところ。
2003年4月、当院に土地を提供し協力してくださっていた地主さんが末期癌とわかり、数ヶ月当院に入院し亡くなられました。急なことでした。そして地主さんが住まわれていた古い家が空いて、そこを使わせていただけることになったのです。この地域に典型的な民家の造りはそのままにして、雨漏りのする屋根瓦と床と畳を新しくしました。この7月、新しくなった木造の民家は、障害児者の支援費を利用してのデイサービス事業所としての指定を受けました。名前は、地主さんの家の屋号をいただいて、デイセンター「庄左ヱ門」。
内科の診療所を始めてみて知ったのは、高齢者を支えることの大切さでした。介護保険が始まり、外来ホールのスペースを利用して高齢者のデイケア事業所の指定を受けました。高齢者のデイケアを行ってくるなかで、介護保険の対象にならない65歳以下の看護、介護を必要とする方のデイ、障害児者のデイの必要性を知らされ、ニーズを満たす場がこの地域にまだまだないことを知りました。そして、デイホスピスの役割を担うデイセンターがあって、入院している患者さんの病状が落ち着いていて、ちょっと病室からでて日中を過ごせる場としてのデイセンターにもなれたらいい。まずはできるところからと、今ある制度を利用して支援費制度でのデイサービスを始めました。
今後、デイセンターで何をするのか。気功教室のほか何をするのか、一つ、二つプログラムを増やしながら取りかかってみたいと思っています。多くの人の集いの場になってほしく、欲張って、飲食店営業許可もとりました。喫茶「庄左ヱ門」の誕生です。マンパワーの関係上、まずは毎週金曜日のみのオープンです。医療や介護の支えが必要な方たちが集まれるデイセンターは必要ですが、同時に、健康な、ふつうの人間が行きたい、行って楽しいと思う場所にしたい。
高齢者も、障害者も、病気の人も、健康な人間も、限りあるこの世で、命の不思議さ大切さを共にできる場づくりをしたいと思っています。 どうぞよろしくお願い致します。
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